嗤う分身(THE DOUBLE)
嗤う分身
THE DOUBLE
2013 イギリス
すごい映画を観た。
完全にジェシー目当てで観たけれど、度肝を抜かれた。
まず冒頭の電車のシーン。
暗いし、変な男に「そこは俺の席だ」と言われて、えっ他にたくさん空いてる席あるのにと思いながらもどいてしまうジェシー。いやサイモン。内気で真面目な男。なかなか電車から降りられない。やっと降りたらかばんが電車のドアに挟まる。かばん挟んだまま発車する電車。普通おかしいけど、もうここから奇妙な世界観が始まってるんだと思わせる。
覗きをするサイモン。好意を寄せているハナ(ミア・ワシコウスカ)の向かいに住んでるのは偶然?しかも、男が飛び降りる瞬間を目撃してしまう。手を振ったあと突然飛び降りたからびっくりした。
警官が言う。少し右にずれてたら、ネットがあったから、すぐに病院へ運ばれていれば助かったかもしれないのに、と。
そしてこのことでハナと話すチャンスを得たサイモン。行きつけのお店に行くが、ここでも会社同様に周囲はサイモンにぞんざいな態度で接する。
ハナは死んだ男にストーカーされていたのだと打ち明ける。
「ただ私を見つめて気持ちが伝わる?うまくいくと思う?ずっと見つめていればそのうち、私からキスするとでも?交際するとでも?つきまとわないで!」
サイモンにはグサリとくる言葉だっただろう。自分に言われているかのような気持ちになる。
ハナが残した楽しかったとのメモに有頂天になるサイモン。うきうきしてテレビを売り、プレゼントを買う。(このうきうきジェシーが可愛すぎる)
終始暗いこの映画で唯一赤や青の鮮やかな光が。
結局影が薄いせいで社員と認識してもらえずパーティからつまみ出されてしまうサイモン。ハナにプレゼントは渡せずじまい。
「これは僕じゃない!」
そんな何もかも上手くいかないサイモンの前に突然現れる、自分と全く同じ顔をした男。
彼はジェームズ・サイモンと紹介され(サイモンはサイモン・ジェームズ)、サイモンの職場に入社。ハナの上の部屋に住み始める。不敵に笑うジェームズ。
職場の人は誰もジェームズとサイモンがそっくりだと言わない。サイモンの影が薄すぎて気づかない。服まで同じなのに。
鶏が死ぬ描写は何だろう。
ジェームズとご飯を食べるサイモンは、なんか仲良くなる。社交的なジェームズにクラブに連れていってもらい、絡まれて倒して走って逃げて解放感を感じるサイモン。
電車で自分とハナについて語るが、ジェームズは寝てしまう。ジェームズを自分の部屋に連れ帰り、ベッドに寝かせ、望遠鏡を覗くサイモンの後ろでこっそり目を開けるジェームズ。起きてやがったか。
ハナの部屋の窓についてる血のような手の跡は何だろう。
ジェームズの変わりに適性検査をサイモンが受け、サイモンの変わりに社長の娘メラニーの教育係をするジェームズ。誰も気づかない。
サイモンはジェームズのアドバイスに従い、ハナと食事にこぎつけるが、ハナが好きになったのはジェームズで、紹介して欲しいと頼まれる。
ジェームズはサイモンにジェームズの振りをしてデートに行かせるが、上手くいかない。結局今度は本物のジェームズが帰ろうとするハナの元に行き、何か上手いこと言ってキスをする。すごいなジェームズ。
翌日、二人の行方が気になるサイモン。ハナを見つめる。昨夜はどうだったと聞くがはぐらかされてしまう。メラニーはサイモンとジェームズの区別がついてないのかサイモンになつく。
ここでサイモンが作った資料をジェームズが奪い、自分のものとして提出。めっちゃ腹立つ。
母のいる施設に行くと、奇妙なお婆さんにナイフを渡される。
望遠鏡を覗き、ジェームズがメラニーを部屋に連れ込むのを見てハナに電話をかけるサイモン。ジェームズの振りをして"Come up. I want you."
ジェシー!!
ジェームズにハナに近寄るなと詰め寄るが逆に脅され、部屋の鍵を奪われてしまう。
ハナからはジェームズのことを相談され、前に電車でサイモンが語ったハナと自分の話をジェームズが自分のことのようにハナに話していたと知る。益々ジェームズに腹が立つ。
ジェームズはサイモンの首を切りつける。
会社に行くと、ジェームズはサイモンの手柄で称賛され、メラニーに手を出したのはサイモンだとされる。遂にキレるサイモン!キレるジェシーも不敵に笑うジェシーもどっちもすてき。
帰宅したサイモンは遺書を書き自殺しようとするが、ハナの自殺未遂を目撃し病院へ。しかしハナは助けてほしくなかったと。
「思ったんだけど、あなたが自殺してよ」
あと医者が警備員だったのは何故だろう。
サイモンの上着を羽織ったまま帰宅したハナは、上着のポケットからサイモンが買ったプレゼントやハナが捨てた絵のノートを発見し、サイモンの愛に気付く。たぶん。
サイモンの母が亡くなる。あの適当な葬儀のメッセージはジェームズ?
母のお葬式にはなぜかジェームズが参列しており、サイモンはジェームズを殴る。そしてジェームズの怪我がサイモンの顔にも現れ、サイモンは気が付く。
ハナの元へ行き、「操り人形はイヤだ。さよなら」
ここから怒涛の展開。
サイモンは自分の家で眠るジェームズの元へ行き、手を手錠でベッドに繋ぐ。ジェームズの首に自分と同じ、ジェームズが切りつけた傷があることを確認する。
サイモンはジェームズの家へ。警察か救急に電話をかけて、頬を切りつけジェームズを起こす。突然の頬の痛みに飛び起きたジェームズは手錠で繋がれたベッドを引きずり、望遠鏡を覗く。すると手を振るサイモンが見え、手を振り返すとサイモンは飛び降りる。ここで光の当て方がすごい。サイモンとジェームズの運命を示唆する。
地面に倒れたサイモンに駆け寄るハナ。サイモンの手は不自然に上がっているが、部屋でベッドに繋がれた体制で倒れるジェームズのカットでなるほどと思う。
救急車に運ばれ、一緒に乗り込んだハナは、目を開けたサイモンに、サイモンのプレゼントであるピアスをつけた耳を見せ微笑む。
サイモンはすぐに病院へ運ばれるのできっと助かる。ジェームズは部屋で倒れ、そのまま助からないだろう。
この映画は光の使い方が上手いと言われているようで、もう一度観てみたら確かにすごかった。
サイモンは右側、ジェームズは左側に光が当たる。調べてみると人は顔の左側に本音が表れるらしい。
ジェームズはサイモンが作り出したドッペルゲンガーで、理想的な人?正反対の人?
解釈が広がる、とても面白い映画だった。